インターネットや物流の発達によって、国境を越えたビジネスの展開が、かつてないほど身近なものとなってきました。これまでは、大企業だけが行う特別な戦略と思われていた海外市場への進出も、いまでは中小企業や個人事業主にとっても現実的な選択肢として捉えられるようになっています。では、なぜ今、海外展開がこれほどまでに注目されているのでしょうか。
その理由のひとつとしてまず挙げられるのは、グローバル化の進展です。経済のボーダーレス化が進む中で、製品やサービスの需要と供給は、もはや国内だけにとどまらず、世界中に広がる傾向を見せています。とくに、インターネットの普及によって、小規模な企業であっても、海外の顧客に向けて直接商品を販売することが可能となりました。加えて、デジタル決済や多言語対応のウェブサイト、越境ECなど、販売やサポートに必要なインフラも急速に整備され、海外展開の障壁は以前と比べて大きく低下しています。
こうした技術的な進歩に加え、日本国内の市場環境もまた、企業にとって海外進出の動機となっています。日本では、少子高齢化や人口減少が進み、内需の拡大が期待しにくい状況となっています。国内だけで安定した売上や成長を維持することが難しくなりつつある中、新たな収益源を求めて、海外に目を向ける企業が増えています。では、中小企業にとって本当に海外展開は現実的な選択肢となり得るのでしょうか。かつては、海外に進出するには多額の資金が必要であり、現地法人の設立、複雑な税制や法規制への対応など、高いハードルが存在していました。しかし近年では、その状況も大きく変わりつつあります。たとえば、タックスヘイブンと呼ばれる地域においては、比較的簡単にオフショア法人を設立することが可能となっており、税務面や規制面でのメリットを享受しながら海外取引を始めることができるようになっています。また、現地パートナーとの業務提携や、越境ECサイトの活用によって、自社の製品やサービスをスピーディーに海外市場へと届けることも現実的となりました。
この海外進出を検討する中で、よく耳にする言葉のひとつがこのオフショア法人です。しかし、この用語は一見専門的で、なじみのない方にとっては少し敷居が高く感じられるかもしれません。オフショア(offshore)とは、文字通りには「岸から離れた」「海外の」という意味を持つ英語で、ビジネスの文脈では「自国以外の地域における経済活動」を指します。つまり、オフショア法人とは、日本企業や日本人個人が、外国の特定の地域に設立する法人を意味します。なかでも、法人税が非常に低い、あるいはまったく課されない国や地域に設立される法人は、「タックスヘイブン(租税回避地)」として知られています。タックスヘイブンとして有名な地域には、英領バージン諸島(BVI)、ケイマン諸島、セーシェル、パナマ、香港などがあります。これらの地域では、法人登記の手続きが簡易であり、設立費用や維持費用も比較的安価で済むため、世界中の企業や富裕層が活用しています。とくに、実際に現地でのビジネス活動を必要としないペーパーカンパニーとして設立することで、資産管理や税務対策の一環として利用するケースが多く見られます。それでは、なぜ中小企業や個人事業主がオフショア法人を活用するのでしょうか。その最大の理由は、税制面でのメリットです。オフショア地域の多くは法人税がほぼゼロに近いため、現地で得た収益について課税されることがほとんどありません。もちろん、これは合法的な枠内で行われるべきものであり、国際的な税務ルールや報告義務に注意を払う必要がありますが、適切に活用すれば企業にとって大きなコスト削減となります。また、オフショア法人には匿名性を保持できるという特徴もあります。たとえば、ノミニー(名義人)という制度を使えば、登記上の役員や株主として第三者を登録することが可能となり、実質的なオーナーの情報が外部に公開されにくくなります。これにより、個人の資産を保護したい場合や、複数の事業を分けて管理したい場合などに有効な手段となります。
このように、インターネットを含めた技術革新と経済環境の変化に後押しされながら、今や中小企業であっても十分に海外展開を実現できる時代が訪れています。特に、タックスヘイブンと呼ばれる地域に法人を設立することで、税制上のメリットを得ながら国際取引を行うことも可能です。これは、節税や資産保全の観点からでも有効な手段とされています。もちろん、コンプライアンスに関する配慮は必要ですが、オフショア法人設立代行を業務とするサービスプロバイダや弁護士など信頼できる専門家のサポートを受ければ、中小企業でも十分に対応可能です。さらに、これら専門家は設立に関する情報はもちろんの事、法人を継続させることに関しても情報を多く持っています。それによって、持続可能なオフショア法人が成立します。