オフショア法人設立にあたってのnominee directorの利用

タックスヘイブンと呼ばれる地域では、ノミニー制度(nominee)を採用している地域や国が多くあります。ノミニー制度とは、法人の役員や株主を「nominee director(ノミニーダイレクター)」で登記できる制度を指します。オフショア法人は元々その情報が非公開なので、ノミニー制度は必要ないと思われますが、ノミニー制度を利用して法人登記を行うことで、会社定款などの法人書類に実際のオーナー情報を記載する必要がなくなり、そのセキュリティが強固なものになります。nominee directorとは、意思決定を行わない名目上の取締役のことですが、nominee directorのシステムが日本国内には存在しないため、日本では理解しにくいかもしれません。ですが、オフショア法人としての要件を満たすために、nominee directorという名目上の取締役を利用することが、タックスヘイブンで設立されたオフショア法人では多く採用されています。ただ、オフショア法人はそもそも株主や役員の情報が非公開であるためnomineeの活用は不要と考えられますが、プライバシー保護を徹底してnomineeを活用される方が多いのも現状です。

この場合、真のオーナーの個人データなどは設立先の国や地域に提出する必要が全く無く、どのような書類にも真のオーナーの記録が残らないので、個人データが何らかの形で漏洩するということが無くなります。真のオーナーの権利はnominee directorが発行するパワーオブアターニー(Power of Attorney)によって法的に保障され、法人活動や銀行口座の全権・管理はすべて真のオーナーに帰属します。つまり、nominee directorを利用して設立すると、正規の法人でありながら実際のデータをまったく公開する必要がないということであり、しかも所有者はもちろん真のオーナーで、法人活動にはなんの支障も生じません。法人銀行口座開設にも問題はなく、セキュリティの厳重な銀行口座を開設すれば、きわめて高いセキュリティの下で法人活動を展開することができるようになりますので、名前を出さないで法人を設立することが可能になります。設立のために用意する書類はnominee directorのものを使用するため、真のオーナーの書類の準備をする必要もありません。このようにして、極めて高いセキュリティを確保することができます。ただし、会社運営上で問題が発生した場合の全責任は「実際の株主・役員」が負うことになります。

しかも、この制度は設立先の国や地域によって認められた合法的な法人設立の手段であり、タックスヘイブンで非常に有効な働きをするものであり、だからこそnominee directorによる法人は正規の法人であり、抜け道や裏側の方法ではありません。nominee directorを認めている国から見れば、これは法人設立の重要な手段となり、セキュリティの漏洩を危惧し、真剣に守秘性を考える方にとっては検討に値するシステムです。

しかし、デメリットも少なからず存在します。nominee directorを利用することで、倫理的な問題が生じる可能性があり、特に透明性や誠実性を求められる業界や市場での利用には慎重さが必要です。また、租税条約を結んでいる国の場合、実態の情報を明らかにする必要があります。これは、過去にnominee directorが過度な節税や、マネーロンダリングなどの違法行為に利用されていたということに起因したものであり、本来の目的やメリットのためにnominee directorを採用するのであれば、何の問題もありません。また、nominee directorにはnomineeを提供するサービス会社に支払うコストの問題があります。そして、そのnomineeサービス会社の選定にも注意が必要です。多くの場合は、設立を代行する専門家が指定するサービス会社で問題はないと考えますが、自社でnomineeサービス会社を選定する場合は、信頼性や実績を確認するなど注意すべき点が多く存在します。そしてそれら注意すべき点は、特に知らない国や地域の情報を集めるということになるので、大きな労力になります。そのようなリスクや労力を軽減するためにも、専門家に依頼すべきであり、専門家は設立に関して数多くの実績があり、nomineeサービス会社に関しても実績を持った会社を知っています。

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